「米国債券ETF(AGG、BNDなど)は低リスクで安定したインカムゲインが得られる」 そう思って投資をしてきましたが、NISA制度で非課税枠が拡大してから「どうも税効率が悪い気がする」ということが気になっていました。
日本の個人投資家にとって、米国債券ETFは**「税効率が極めて悪い」**という厳しい現実があります。
『外国税額控除』を使えば「確定申告すれば米国側で支払った税金は戻ってくる」のですが、FIRE後など国民健康保険の場合は、配当金を確定申告すると社会保険料が上がってしまい逆効果になるケースも多いですし、それ以外にも扶養から外れるのが嫌など「確定申告できない人」も一定数います(※私が確定申告をしない具体的な理由は、記事の最後で詳しく解説しています)
今回は「確定申告しない前提」の場合、「AGGは果たして投資するに値するのか」を検討してみます。
投資対象ごとの配当・利息に対する税率一覧
まず、確定申告をしない前提(特定口座・源泉徴収あり)での税率を確認していきます。
AGGやBNDなどほとんどの米国上場債券ETFはNISAで買えないため、逃げ場のない「約28.3%」が重くのしかかります。
| 投資対象 | 特定口座(源泉徴収あり) | NISA口座 | 備考 |
| 日本株式(現物) | 20.315% | 0% | |
| 日本株式ETF | 20.315% | 0% | |
| 日本債券ETF | 20.315% | 0% | |
| 日本債券(現物) | 20.315% | 購入不可 | |
| 米国株式(現物) | 約28.3% | 10% | 米国10%+国内20.315%の二重課税 |
| 米国株式ETF(米国上場) | 約28.3% | 10% | VOO、VTIなど |
| 米国株式ETF(東証上場) | 20.315% | 10% | 二重課税調整対象銘柄は特定口座20.315%に自動調整。NISAは自動調整対象外。現地税10%課税後、分配金が計算される |
| 米国債券ETF(米国上場) | 約28.3% | 購入不可 | AGG、BND、TLT、LQDなど |
| 米国債券ETF(米国上場/ごく一部) | 約28.3% | 10% | EDVなど毎月分配ではないごく一部 |
| 米国債券ETF(東証上場) | 20.315% | 10% | 米国株式ETF(東証上場)と同じ |
| 米国債券(現物) | 20.315% | 購入不可 | 米国での利息課税が0%のため |
| 外貨MMF | 20.315% | 購入不可 | 米国での利息課税が0%のため |
※米国上場資産の「約28.3%」は、現地で10%引かれた後の残りに日本の20.315%がかかるため発生します。
米国株式や米国株式ETFも特定口座の場合は約28.3%の税負担ですが、これらの多くはNISAで購入できます。
そのため、税負担を軽減して保有する手段があります。
一方で、AGG、BND、TLT、LQDなど、ほとんどの米国債券ETFは、NISAで買えない上に、特定口座で買うと約28.3%の税金が取られるので、確定申告できない場合、大きな税負担を避ける手段がありません。
こうしてみると、AGG等の米国債券ETFだけが、保有するなら高い税負担をしないといけないような状況にあるのがわかります。
AGGの税引き後利回りは「1%以上」も損をする?
では、この税負担の違いが、どれぐらい利回りに影響するのでしょうか。
米国債券ETFの王道「AGG」と、配当利回りが同レベルの「日本株/J-REIT」で比較してみます。
- AGG(米国上場・特定口座): 分配金利回り 3.88% → 税引き後(28.3%減):約2.78%
- 日本株/J-REIT(NISA): 配当利回り 3.88% → 税引き後(0%):3.88%
その差はなんと 1.1% 以上。 同じ利回りでも、投資先と口座の選択肢が違うだけで、手元に残る金額にこれほどの差が出てしまいます。
AGGは表面の利回りで見えているほど高利回りではない、とも言えます。
確定申告しない場合、AGGは投資する価値があるのか?
分配金(利回り)だけを重視するのであれば、NISAで高配当株やJリートに投資した方が、AGGと同じ表面利回りであっても税後の利回りはかなり大きくなります。
そのため「とにかく分配金(利回り)が高いものに投資したい」ということであれば、AGGに投資する際には注意が必要です。
AGGは表面上の利回りが高くても28.3%の税金がかかるため、税後の利回りでしっかり他の商品と比べた上で判断する必要があります。
この目的の場合、税後の利回りが低ければ、AGGは不要、という結論になります。
一方で、多くの場合、AGGへの投資を検討するのは「株式とは異なるタイプの資産(債券)に投資したいから」「円建て以外の資産に投資したいから」といった「リスク分散が目的」だと思います。
この目的の場合は、まずは、利回りが低くても「米国債券カテゴリー」への投資は必要、となります。
その上で、次の疑問は「特定口座でAGGに投資すると税負担が大きいことはわかったけど、では「米国債券カテゴリー」に投資をしたい場合、AGGがいい?他の商品がいい?」になります。
「米国債券カテゴリー」への投資として考え得る代替手段を比較してみると、それぞれに以下のようなメリット、デメリットがあります。
| メリット | デメリット | |
| AGG(特定口座) | 少額から購入可 広く分散 中途換金が容易 長年の運用実績 | 税負担28.3% |
| ナマの米国債券(特定口座) | 税負担20.315% 信用力は高い | 購入単価が大きい 分散しづらい 中途換金時の手数料等が不透明 |
| 東証上場の米国債券ETF(特定口座/NISA口座) | 税負担20.315%(NISAなら10%) 少額から購入可 広く分散 | ファンド総額が小さい 運用実績が短い 出来高が少ない 利回りが本家(AGG)より低いことがある |
| EDV(NISA口座) | 税負担10% 少額から購入可 広く分散 中途換金が容易 長年の運用実績 | 超長期(20-30年のゼロクーポン債)で残期間が長く、値動きが大きい(AGGとは性質が異なり金利変動に極めて敏感) |
わたしの結論:とりあえず既投資分のAGGはそのまま保有
わたしの場合は、まず「東証上場の米国債券ETF」は除外しました。
理由は、運用の歴史が浅いため、ETFの規模がまだまだ小さく、出来高もかなり小さいためです。
NISAで買うと税率10%になりますが、そもそもの投資対象商品の選定にあたって「長期で安心して保有できるもの、時価総額が大きく信用できるもの」にするということを大事にしていますので、その基準にまだ当てはまらない、と判断しました。
あとは、AGG、ナマ米国債券、EDVともに一長一短なので、結局、分散投資で3つとも保有しています。
AGGで28.3%の税金を取られるのは「はっきり言って非常にコストが高い」と感じつつも「分散、売買のしやすさ、適度なデュレーション(残期間8年弱)、それなりの利回り(税後であっても)、規模と実績」を兼ね備えた代替商品がないため、過去に投資した分はそのまま保有継続することにしました。
まとめ
今回は「確定申告しない場合、28.3%の税率を負担してまでAGGに投資する価値があるのか」というテーマで、各商品の保有口座ごとの税率の違い、税金のインパクト、米国債券に投資する場合の手段の比較を行いました。
「知ること」と「知った上での判断」は別ものなので、今回のわたしのように「知ったところで、最終的な判断は結局変わらない」こともありますが、いろいろ調べてみて勉強になることもありました。
本日もお読みいただきありがとうございました。
補足:「確定申告をして取り戻す」のリスクとデメリット
冒頭でも少し述べましたが「米国上場ETFでも、確定申告をして『外国税額控除』を受ければ損はないのでは?」と考える方も多いと思います。
わたしも以前、会社員のときは確定申告をして『外国税額控除』で払いすぎた税金を取り戻していました。
しかし、実は**「合計所得金額」が増えることによる副作用**という大きな落とし穴があるケースがあります。
特に2024年(令和6年)以降の税制改正により、以下のリスクが顕著になりました。
① 社会保険料(国民健康保険・介護保険)が上がる
自営業者やリタイア層など「国民健康保険」に加入している場合、配当金を確定申告すると「所得」としてカウントされます。
- リスク: 数千円の税金を取り戻しても、翌年の保険料がそれ以上に値上がりし、トータルで赤字になるケースがあります(※会社員などの社会保険は給与額で決まるため影響しません)。
② 扶養控除や配偶者控除から外れる
ご自身が誰かの扶養に入っている場合や、配偶者を扶養に入れている場合に影響が出ます。
- リスク: 申告によって所得制限のボーダーラインを超えてしまい、扶養家族から外れ、世帯全体の税負担が大幅に増える可能性があります。
③ 各種手当・公共サービスの利用料への影響
以下の判定は「合計所得金額」を基準に行われるため、注意が必要です。
- 住民税非課税世帯の判定(給付金の対象外になる)
- 高齢者の医療費窓口負担の割合(1割→3割など)
- 児童手当の所得制限
- 公営住宅の家賃や大学の修学支援制度(奨学金)など
まとめ:確定申告をすべきかどうかの判断基準
| 確定申告しても良い人 | 確定申告を避けるべき人 |
| 会社員(社会保険が給与固定) | 自営業・リタイア層(国保加入者) |
| 扶養家族がいない、所得制限に余裕がある | 誰かの扶養に入っている人 |
| 住宅ローン控除等で所得税が余っている | 所得制限のある手当を受けている人 |
| 取り戻せる税額が数万円単位と大きい | 取り戻せる税額がわずか |
[!IMPORTANT]
**「特定口座(源泉徴収あり)」**で申告不要を選択していれば、配当金は所得にカウントされません。あえて確定申告をして「所得」として表に出すことが、自分にとってメリット(還付金)かデメリット(保険料増・扶養外)かを天秤にかける必要があります。



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